第10話

第10話

「エドリック様、今夜は抱いてください」

 ……エドリックがゼグウスへ発つ前夜、寝台に入る前フローラはエドリックにそう言った。既に四人目の子を授かっている事が少し前にわかっている。それ以降、フローラは悪阻で体調もすぐれなかったし、子供が出来ていれば交わる必要もない。妊娠発覚以降、閨事は無かった。
 エドリックは真剣な顔をでそう言ったフローラの事を何も言わず抱きしめてくれる。彼も彼で何か思う所はあるのだろうが……フローラは彼の胸の暖かさに瞳が熱くなってくる。

「抱いたって気持ちは変わらないよ」
「違います……貴方を行かせたくない。その気持ちには変わりませんが、身体で繋ぎ留めようとしている訳ではありません。どれくらいの時間会えなくなるかわかりませんから、最後に愛し合いたい……」
「フローラ……」

 エドリックの背を、ぎゅっと抱く。彼の意思が固い事はわかっている。彼は人間が嫌いだが、それでもその人間達のために尽力する人なのは知っている。
 魔物が王都を襲う事が避けられないのなら、それを迎え入れる準備をするための時間を稼ぐと……
 大好きな、心の奥底から愛する優しい人。彼のそんな優しいところは、愛しい。だが、今は嫌いだ。その優しさのせいで、危険を顧みず彼は一人敵国へと向かうと言う。自分たちはどれほどの時間になるかわからないが、離れ離れにならなくてはいけない。

「……愛してるよ、フローラ。何があっても、どこにいても、君だけを想っている。私の心は、永遠に君だけのものだ」
「心だけじゃ嫌です」
「ははっ。心も身体も、何もかもすべてだよ」
「エドリック様……」

 こんなにも切ない気持ちで抱かれるのは、初夜の夜から何年も経ったが今日が初めてだろう。エドリックはその日、初夜の日以上に優しくフローラを抱いた。まるでそれは、永遠の別れを惜しむような……彼だって行きたくてゼグウスへ行くわけではないと、愛の囁きにそれを感じる。
 翌日、フローラは涙を堪えながら笑顔でエドリックを見送った。いつもなら城壁のところまで送るが、今日はそこまで送れそうにない。子供達と一緒に、屋敷の玄関前で別れを告げた。

「必ず迎えに行くから、君も早くレフィーンへ行って欲しい。じゃないと安心できないから」
「エドリック様、必ず来てくださいね。私、待ってますから」
「あぁ。私が嘘を吐いた事があるかい? 必ず行くと言ったら、必ず行く。何があっても」
「はい。……貴方の無事を、お祈りしております」

 最後に抱き合って、優しい口づけを交わして……。彼が馬車に乗り込んで、馬車が動き始めたら作った笑顔はもう保てなかった。涙が零れる。

「母上、父上なら大丈夫です。父上は大陸一の魔術師です。それに、嘘が嫌いなんです」
「そうねエルヴィス、お父様が嘘を吐く事など……約束を破る事なんて絶対にないわね」

 励ましてくれる、エドリックによく似た息子をぎゅっと抱きしめる。フローラはレフィーンに行くようにとエドリックからも言われているが行きたくない。
 そんなフローラを見て、義父がフローラに声を掛けた。

「フローラ、お前はいつレフィーンに発つつもりだ」
「お義父様……私はここでエドリック様の帰りを待つ訳には参りませんか」
「うむ……エドリックからも、お前はきっとレフィーンへ行きたがらないから、どうにかしてレフィーンへ行かせてくれと頼まれている。私自身も、この街が戦場になると言うのならお前と孫たちは安全なところへ逃がしたいとそう思う」
「……ですが、エルヴィスはここに残すのですよね?」
「エルヴィスは我が家の跡取りだ。エドリックが一緒と言う訳でも、短期間の旅行と言う訳でもない以上、行かせるわけにはいかん。エルヴィスはもう手のかかる年でもなければ、一人くらいなら子供がいたって我々も守れる」
「……エドリック様と離れ離れになるのに、エルヴィスとも離れるなんて私には耐えがたいのです」
「その気持ちはわかる。だが、お前とエルミーナ、エドガーとお腹の子の身の安全のためだ。理解してほしい」
「……ギリギリまで、エルヴィスと一緒に居させてください。それに私、今悪阻がありますから……この悪阻の中で長距離の馬車での移動は辛いです」
「そうだな、では悪阻が落ち着くまでだ。それ以上は……わかってくれフローラ」
「はい、お義父様……」

 そうして、フローラはエドリックの出発からおよそ一月……悪阻が落ち着いてからエルミーナとエドガーの二人を連れてレクトを出発しレフィーンへ向かう日が決まった。
 出発までの間毎日エルヴィスを抱きしめて眠ったが、エルヴィスは母親と寝るのは少し恥ずかしいとそう言いたそうだった。
 親の心、子知らず。フローラはエルヴィスと離れるのはこんなにも寂しいと言うのに、エルヴィスは事の重大さをあまり理解していないのかあっけらかんとしていた。

「エルヴィス、元気でね。おじい様とおばあ様の言う事をよく聞くのよ」
「僕は大丈夫です、母上。母上こそ、お腹に赤ちゃんがいるから無理をしないでくださいね。元気な赤ちゃんと一緒に帰って来てください。あ、僕が父上と一緒に迎えに行くかもしれません」
「そうね、お父様と一緒にエルヴィスが迎えに来てくれたらお母様は嬉しいわ。元気な赤ちゃんを産むから、楽しみにしていてね」
「はい、また弟か妹が増えるのが楽しみです」
「エルヴィス、やっぱり離れたくない……!」

 出発の前、エルヴィスを抱きしめる。まだたった七歳だと言うのに、随分としっかり者として育ってくれた。やはり下に弟妹がいるから、兄としてしっかりと育ってくれたのだろう。
 立派な父親の、エドリックの背をしっかりと見ていてくれたのかもしれない。

「ははうえ……」

 だが、やはりまだ子供は子供なのだ。フローラが泣きながらエルヴィスを抱きしめれば、母を呼ぶエルヴィスの声は涙声だった。顔を覗けば、必死に泣くのを我慢している。

「ごめんねエルヴィス。大好きよ。愛してるわ。あなたはお母様の大事な大事な宝物よ。いい子にしていてね」
「はい、ぼく……ちゃんといい子にしてます。だから母上、泣かないで……」
「あなただって、泣きそうじゃない」
「泣きません。男は泣かないんです」
「おかあさま、ぎょしゃさんがもういかないとっていってる」
「そうね、エルミーナ。……エルヴィス、次に会うときには笑顔で会いましょう。身体に気を付けてね。お手紙も書くわ」
「はい、母上。僕も手紙、書きます」

 抱きしめていたエルヴィスと離れ、エルミーナとエドガーを連れ馬車へ。レフィーンへは、事前にエドリックが話を通してくれている。
 長男のルドルフはフローラ達を快く受け入れてくれたし、フローラを嫌っていた次兄のウィリアムは数年前に亡くなっている。三男もフローラの事を嫌ってはいたがウィリアム程ではないし、大公の屋敷を出ていると言う。
 母も二年前に他界。長女・次女はフローラがエドリックに嫁ぐよりも前に嫁いでいるし、三女のリリアナも数年前に嫁いだと言うから仲の悪い兄姉達と鉢合わせる事はなさそうな事には安堵していた。

 八年振りにレフィーンへ。前回訪れた時はエドリックと一緒で、まだ初夜を迎える前だった。その時は父の弔問だったが、ウィリアムも死んでしまって大変だったことを思い出す。
 レフィーンへの道のりは決して楽なものではない。義父がグランマージ家の魔術師の他にも凄腕の冒険者を護衛に着けてくれたので魔物が襲撃してきても問題はなかったが、距離があるので道中は大変だった。
 やっとの思いでレフィーンへ着いて、兄・ルドルフが暖かく迎えてくれる。初めて訪れる国にエルミーナとエドガーは興奮気味だったが、すぐにこの国にも慣れてくれるだろう。

 エドリックとは月に一度、手紙のやりとりをした。きっちり一月に一回、エドリックから手紙が届くからフローラもすぐに返事を書いて送る。
 ゼグウスでこの手紙がきちんとエドリックの元に届いているのかはわからないが、フローラの書いた言葉への返事もあるので届けてくれているのだろうとは思っている。
 だがゼグウスの検閲があるだろう。フローラが変な事を書いてエドリックに届かないのは嫌なので当たり障りのない事しか書けない。エドリックから届く手紙も、毎回当たり障りのない内容だったが……
 毎回、必ず『愛してる』と書いてくれる。早く会いたいと、会ってその言葉を囁き合いたいと……フローラはそう思うのだ。

 そうこうしているうちに年が明けた。フローラがレフィーンに戻ったのは初夏になる頃だったが、もう冬も過ぎた。そうすると、レクトからレオンの妹・アリアがやってくる。
 事前にレオンから相談があっての事だが、アリアと……レオン・エミリア夫妻の子、リュークもレフィーンに置いて欲しいと言う打診があったのだ。
 レオンから打診があった時には王都が魔物に襲われる時期が大体特定はできていた。だからフローラは一旦王都に戻ってエルヴィスを抱きしめたかったのだが、お腹も大きくなり始めていたしエルミーナやエドガーを連れて行くのは大変だし、何より……
 次エルヴィスに会えば、もう離れたくないとそう思ってレフィーンへ再度戻る事が出来なくなりそうだった。だからレクトへ帰りたいと言う気持ちはグッと堪えた。
 それになんとかレクトへ向かう事が出来ても、レクトからレフィーンへ戻ってくる頃には臨月だから道中で生まれてしまっても困るし……

「フローラ様、お久しぶりです」
「いらっしゃい、アリア様。お元気そうでなによりですわ」
「アリアしゃま」
「まぁエルミーナ様、以前お会いした時より随分大きくなられましたね」

 アリアは屈んでエルミーナに目線を合わせると、にっこりと笑ってそう言う。アリアはとても可愛らしい少女だ。以前レオンに頼まれ彼女へ淑女教育をしていたが、その際にエルミーナも連れて行ったことから子供好きなアリアはエルミーナもよく可愛がってくれていた。

「リューク様も、随分と大きくなりましたね」
「えぇ、早いものでもう九カ月なんです」
「リューク様、優しい叔母様がいてくれて良かったですわね。お父様たちの元に戻る頃には、一人歩きができるようになっている頃でしょうか」
「そうですね。フローラ様のお腹も、大きくなっていますね」

 もう臨月のお腹は随分と大きい。出産は四度目だが、何度経験してもこの大きなお腹は大変である。だがお腹の中からポコポコと蹴られ、その動きで赤ん坊が元気なのを感じると嬉しくもある。

「えぇ、きっともうすぐ生まれますわ。……生まれる前に、エドリック様が迎えに来てくださらなかったのは寂しいですが……」
「……」
「手紙は、月に一度届くのですのよ。だから私も、お返事を出しているんです。ゼグウスの方が、エドリック様に渡してくれているかはわかりませんけれど……」

 そう言って寂しそうに笑えば、アリアは何と言って良いかわからなかったのだろう。少し困った顔をしていたから『屋敷の中を案内させますわ』とそう言って、使用人にアリア達を案内してもらう事にした。
 それから一週間ほど……本格的な陣痛がやってくる前に、フローラは破水した。上の三人は皆本格的な陣痛が先で破水が後だったので、まだ本格的な陣痛の前に破水をしたのは初めてだった。
 だが産婆はそれもよくある事だと言って特に慌てる事もなく……お産はとても早かった。
 元気な女の子。名前はエドリックが事前に決めてくれていた。

「とっても可愛らしいですね。フローラ様によく似ていらっしゃいます」
「ありがとうございます、アリア様。……早くエドリック様にも、この子を抱いて頂きたい……」
「お名前はなんと言うのですか?」
「エリーゼと申しますの」

 今まで生んだ四人の中で、エリーゼは一番小さく生まれた。だが、乳はしっかり飲んでくれるし、元気に成長してくれるだろう。
 早くエドリックが迎えに来てくれないだろうか。早くこの子を抱いて『小さくて可愛いね』と、そう言って笑顔を見せてくれないだろうか。
 エルミーナはエドガーがいるからお姉さんぶるのは得意だが、やはりお姉さんぶって『エリーゼを抱きたい』と言うから、彼女を寝台に座らせエリーゼを抱かせれば可愛らしく笑って喜ぶ。
 エドガーも、まだ三歳にもなっていないと言うのに妹が出来てお兄さんぶっていた。

「フローラ様、もう一枚毛布をかけましょうか?」
「えぇ、とても寒くて……すみません、アリア様」

 だが出産から三日。猛烈な寒気と共に高熱が出た。この暖かいレフィーンで、風邪をひいたという事はないだろう。
 医者を呼べば『産褥熱ですね』とそう言った。アリアが看病してくれるが、その表情は険しさを隠せていない。
 産後、数日経って高熱が出る事はこの時代にはよくある事だった。それは産褥熱と呼ばれるが、治療法はない。高熱が出た後敗血症を発症し、多臓器不全に陥る死の病。全員がその経過を辿るわけではないが、その可能性は極めて高い。
 出産が命懸けと言うのは何も、出産時の大量出血等による母体死亡だけではない。この産褥熱で亡くなる事も、この時代の若い女性には多かった。

「アリア様、私は死ぬのでしょうか」
「何を仰るんですか、フローラ様。大丈夫ですよ」
「……死ぬ前に、エドリック様にお会いしたい……。エルヴィスも、抱きしめたい……」

 ポロポロと涙が零れてくる。死にたくない。エドリックとエルヴィスに会いたい。子供達の成長する姿を見たい、エドリックと共に年を重ねていきたい。
 いつか子供達が立派な大人になって、結婚したら孫が生まれて……その孫を抱いて『あなたの赤ん坊の頃にそっくりよ』と、そう言えるまで生きていたい。
 だが、病は無情にもフローラの身体を蝕んでゆく。今まで子育てに乳母を使っていなかったフローラだが、熱を出してからはエリーゼに乳をやるわけにいかず初めて乳母を頼った。
 とはいってもそのうちレクトに戻るのだから、専任として雇ったと言う訳ではなくたまたま使用人の家に乳児がいたので彼の妻に乳を頼んだ格好だったが……
 体調がよくなる気配は微塵にも見えない。むしろ日に日に身体は辛く重くなってゆく。エルミーナとエドガーもフローラを心配して度々部屋に来ていたが、抱きしめてやる事すらも出来なくなっていくのが怖かった。
 この場にエドリックが来てくれれば、彼の癒しの魔法で自分の病は直っただろうか? いや、傷を治したりすることはできても病の治療はできないとそう言っていた。彼が来てくれたところで、フローラがここで死ぬ運命はきっと変わらなかっただろう。

「アリア様、私もう自分で筆すら握れません。これから言う事を、遺書として書き残して置いて頂けないでしょうか」
「そんな、遺書だなんてフローラ様……」
「私きっと、もう長くは生きられませんから。意識があるうちに、エドリック様と子供達に私の気持ちを遺しておきたいんです」
「……わかり、ました」

 そうしてフローラは、アリアに遺書の代筆を頼んだ。子供達一人一人に、そしてエドリックに。合計五通の手紙。それをエドリックに渡してほしいと、アリアに託す。
 アリアは泣きながら手紙を代筆してくれて、彼女の姿を見て改めて……もう本当に助からないのだろうと、そう感じた。
 その翌日からは、更に体調は悪化した。食べる事も出来ない。水は辛うじて飲める。常夏の国であるレフィーンにおいて氷は貴重品だが、氷を口に含ませてくれた。

「私は初めて知りましたが、数年前にエドリック様の叔父様がレフィーンに移住されていらっしゃるんですね。氷の貴重なこの国で、魔法で作った氷を販売していらっしゃると。この氷は、エドリック様の叔父様から頂いたんですよ」

 アリアはそう言いながらフローラの口に氷を含ませてくれる。エドリックの父方の叔父、根っからの商売人だが魔術師でもあるエディオン。エドリックがレフィーンの金市場を買い取ったのに合わせ金事業を任された傍ら、氷売りとしても成功しているのは聞いていた。
 だがアリアが言っている事も半分くらいしか理解できていない。
 毎日毎日容態は悪くなっていき、意識もたまに戻るがぼんやりとする中でアリアの声が聞こえる。
『フローラ様、エドリック様からお手紙が届いたんですよ。私が代わりに読み上げますね』と。エドリックと、その名にフローラの意識が反応した。

「フローラ、まだ君を迎えに行けなくてごめんね。レフィーンは雪があまり降らないと聞いていたけど、そうは言っても寒いだろうし風邪は引いていないかい? この手紙が届く頃には、もう子供は生まれているのかな」
「エドリック、様……」
「多分、来月か……再来月には、君を迎えに行けるよ。早く君と子供たちに会いたい……」
「わたくしも、はやく……お会いしたい……。エドリック様……」

 ふり絞る声。溢れ出る涙。瞳から零れた涙が、頬を伝っていく。もう長くはない。もう二度と会えないのはわかっている。だが、もう一目で良いから会いたい……

「フローラ様、ごめんなさい……。私、これ以上は読めません……」

 その言葉は、アリアの声は涙を含んでいた。アリアも泣いている。きっと、その先の言葉はいつもの言葉だ。『愛してる』と。だからもう、アリアは読めない。アリアがエドリックの代わりにその言葉を言う事はできないと、彼女はそう思ったのだろう。
『私も愛しています』と、フローラはそう返事を送りたかったが……それはもう、叶いそうにない。

「フローラ」

 それから数時間。薄れゆく意識の中でエドリックの声が聞こえた。あまりにもエドリックに会いたすぎて、幻聴が聞こえたのだろうか。それとも眠ってしまって、夢なのだろうか。
 フローラは重い瞼を開く。もうほとんど目も見えない。だが、そこにぼんやりと映るのは愛しい人。エドリックがそこに居た。
 先ほどのアリアが読んでくれた手紙には『来月か再来月』とそう書かれていたようだ。ゼグウスからレフィーンまで、手紙が届くのにおよそ二週間。まだエドリックが来るはずはないのに。
 きっと夢か幻だろう。だが、それでもいい。死ぬ前に一目会えたのだから。

「フローラ、ごめんね。君を迎えに来ると言う約束を果たせなかった。どうして君がこんな風に死ななくてはいけないのか……本当にすまない。私がそばに居れば、治してあげられたんだろうか。そうでなくても、こんなにも寂しい想いをさせる事はなかったのに」

 幻か、夢か……わからないが、エドリックがフローラを抱きしめる。強く、強く。決して夢でも幻でもない彼の感覚を感じながら、フローラは最期に愛しい人の名を呼んだ。

「エドリック様、お会いしたかった……」
「フローラ、愛してる。永遠に、私の愛は君だけのものだ。だからどうか、安心してほしい」

 エドリックがフローラに口づける。そこでフローラは意識を失った。もう、二度と目覚める事はない……
 天に召されたフローラの死に顔は、それはとても安らかだった。

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