嫌われ公女と嫌われ男爵の結婚

嫌われ公女と嫌われ男爵の結婚

特別編②

「この子は本当に、幼い頃のエドリックによく似ているわねぇ」 そう微笑んだのは、フローラにとって義母であるイザベラだった。エルヴィスが生後半年を迎えた、ある穏やかな午後のこと。 イザベラが膝に抱いたエルヴィスを見つめながらふとした一言のように...
嫌われ公女と嫌われ男爵の結婚

特別編①

良く晴れた空から暑いくらいの日差しが差し込む午後、フローラはエミリアの友人であるアリスの家へと向かっていた。 馬車の中で正面に座るエミリアの頭に、真新しい髪飾り。それは数日前にレオンから贈られたものだと聞いている。白銀細工の可愛らしい花に、...
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第10話

「エドリック様、今夜は抱いてください」 ……エドリックがゼグウスへ発つ前夜、寝台に入る前フローラはエドリックにそう言った。既に四人目の子を授かっている事が少し前にわかっている。それ以降、フローラは悪阻で体調もすぐれなかったし、子供が出来てい...
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第9話

フローラが初子となるエルヴィスを生んでから六年。育児は大変だったが家族としては順調で、エルヴィスが六歳となった時には二歳半になる長女・エルミーナと一歳になったばかりの次男・エドガーも生まれていた。 この六年の間、家族が増えたこと以外に大きく...
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第8話

季節は巡る。常夏の国で育ったフローラにとっては『四季』と言うものは当たり前に存在するものではなかった。だが、レクト王国には『四季』が存在し、気づけば盛夏も過ぎ秋になっている。 庭の樹に付いた葉の色が緑から朱や黄に変わっていけば、枝からはらり...
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第7話

「遠征……ですか」「あぁ、南東グロスター領の森にウェアウルフが棲みついたと言う話は前から聞いていたんだけど……周辺の町村で家畜が襲われる被害が出てきたんだ。人間に被害が及ぶ前に今度退治しに行かなくてはいけなくなってしまって」 それは、レフィ...
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第6話

フローラの父の弔問、そして次兄・ウィリアムの葬儀が終わりエドリックとフローラはレクトへと戻ってくる。その道中の五日間を含め、レフィーンに行ってからフローラは毎日エドリックの腕に抱かれ眠っていた。 そしていよいよ、レクトに戻れば……結婚して四...
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第5話

「お父様が……?」 それは、突然の訃報だった。レフィーンからやってきた使いが、フローラの父・レフィーン大公が亡くなったと言う報せを遠路はるばるレクトまで届けに来たのである。 フローラがレクトに嫁いでから、ちょうど四カ月。父は兄らと共に遠乗り...
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第4話

フローラがグランマージ家に嫁いで三か月、雪が解けて春がやってきた。色とりどりの花があちこちに咲き乱れ、庭の花壇もとても美しい。 だがエドリックとの関係は相変わらずではあったし、寝室も分けたままで夫婦生活の誘いがある訳でもない。 思っていた結...
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第3話

フローラがレクト王国貴族・グランマージ家のエドリックの元に嫁いで三日目の朝。今日もエドリックはフローラの部屋の前までフローラを迎えに来てくれて、朝の挨拶を交わせばそっと抱き寄せられる。 少しだけ、慣れたとはいえまだ恥ずかしい……フローラは、...